グラミー賞を受賞したローレンス“ブー”ミッチェル氏
ウィリー・ミッチェル氏は2010年にお亡くなりになりましたが、ロイヤル スタジオは息子さんのローレンス“ブー”ミッチェル(Lawrence”Boo”Mitchell)氏が引き継いでいます。ブー・ミッチェル氏は、単にスタジオ経営だけでなく、エンジニア、プロデューサー、作曲家として音楽活動をされています。
2016年の第58回グラミー賞で、ブルーノ・マーズをボーカルにフューチャーしたマーク・ロンソンの「アップタウン・ファンク!」が主要4部門の一つである年間最優秀レコード賞を受賞しました。この曲はロイヤル スタジオでレコーディングされ、その時のエンジニアはブー・ミッチェル氏だったのです。年間最優秀レコード賞は、演奏者だけでなく製作チームにも授与されますから、ブー・ミッチェル氏はグラミー賞受賞者なのです。メンフィスでレコーディングが行われた曲がグラミー賞を受賞したのは「アップタウン・ファンク!」が初めての事です。
ブー・ミッチェル氏は、16歳の若さでキーボード奏者として音楽活動を始め、17歳の時にアル・グリーンの「As We’re Together」のレコーディングに参加しました。そして、メンフィスで最初のラップ・グループ M-Team を結成してアルバムをリリースしました。
2000年以降は、ロイヤル スタジオのマネージャーとして、父ウィリー・ミッチェル氏の仕事を手伝いながら、エンジニア、プロデューサーとしてのキャリアを積み重ね、2004年からロイヤル スタジオのチーフエンジニアに就きました。
ジョン メイヤーの『Continuum』(2006年)に収録された「I’m Gonna Find Another You」をはじめ、一流のミュージシャン達のレコーディングを行っています。
ブー・ミッチェル氏は、偉大なエンジニアでありプロデューサーなのですが、常に写真に写っているような笑顔でフレンドリーに接してくださり、ミキシングルームでお話を聞いたり、写真を撮らせていただいたりしました。ロイヤル・スタジオは創立から60年を超えますが、このスタジオ独特のサウンドを残していく事に力を注いでいるそうです。また、メンフィスが音楽の街として衰退しないようにする事もライフワークの一つだそうです。
スタジオから出る直前に「レコーディングにおいて何を最も重要としていますか?」と尋ねたら、今までの笑顔が消えて真顔になり、僕の目をじっと見て “Feeling” と言いました。更に僕の目を見つめながら人差し指を立てて “Feeling” ともう一度言って、その指を自分の胸に向けました。僕が “Feeling” とリピートすると、「そうだ」という感じで頷いて、指を二本立てて “Second” と言い、次に自分の耳を指さしながら “Sound” と言いました。僕が “Yes, I understood” と言うと、いつもの笑顔に戻り、”Yeah” と言いながら僕の手を握ったあと肩を組んでこられました。僕はこの短いトークも “Feeling” を大切にしたセッションのように感じました。
次回 ⇒ 50. 約束の地、メンフィス ~テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー~ に続く
ロイヤル スタジオの場所と行き方
Royal Studios 1320 Willie Mitchell Blvd, Memphis, TN
メンフィス国際空港からロイヤル スタジオへ、車(レンタカー)で行く場合の一例。
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