ナショナル・シビルライツ博物館
(国立公民権博物館)
National Civil Rights Museum

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館)National Civil Rights Museum)は、メンフィスで必ず寄りたかった博物館の一つでした。この博物館はもともと1925年にできたウィンザーホテル(Windsor Hotel)という数少ない黒人専用のホテルで、キャブ・キャロウェイ、アレサ・フランクリン、カウント・ベイシ、B.B.キング、ナット・キング・コールなどの黒人エンターテイナーが宿泊したこともありました。1945年にウォルター・ベイリーとローリー・ベイリーが買い取り、ロレインモーテル(The Lorraine Motel)という名前にしました。

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum
ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum1968年4月4日、公民権運動の中心的メンバーのマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが、メンフィスにやってきた時、このロレインモーテル306号室に宿泊。バルコニーに出た時に向いのモーテルから狙撃され暗殺されました。1982年に、このロレインモーテルは、アメリカで初めての公民権博物館になりました。
この博物館は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの事だけでなく、黒人奴隷の歴史や文化、黒人の奴隷開放、黒人差別の状況、ジム・クロウ法(Jim Crow laws)と呼ばれる人種分離法、黒人が人権を勝ち取るための運動(公民権運動)などを詳しく知ることができる博物館です。

博物館内は、一部の展示を除いて撮影が禁止されています。おそらく、写真や映像の権利の問題だと思われます。博物館の展示は充実していましたが、訪問した日は、ちょうどサマーバケーションの土曜日だったので、かなり混雑していて、撮影可能の場所でもほとんど写真を撮る事は出来ませんでした。

ローザ・パークスの展示

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum

公民権運動が盛んになる前、アメリカ南部の諸州には、ジム・クロウ法(Jim Crow laws)と呼ばれる人種分離法が施行され、黒人など有色人種は白人と日常生活のあらゆる場所で隔離されていました。レストラン、トイレなど公共の場所で黒人やその他の有色人種は白人と同じ場所に入ったり利用する事を禁止されていたのです。人種差別となる事を法律(州条例)で決められていたのです。バスの座席も白人用、黒人用と分けられており、共有できるシートは白人優先でした。

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum

1955年12月1日、アラバマ州 モンゴメリーのバスで共有シートに座っていたローザ・パークスという黒人女性が、バスの運転手に白人に席を譲るよう命じられましたが応じず逮捕されたことがきっかけで、社会運動家のエドガー・ニクソンがマーティン・ルーサー・キング・ジュニア達に「バス乗車ボイコット運動」を持ち掛けました。これをきっかけに公民権運動が活発になっていくのです。 公民権運動の詳細はこちらをご覧ください。 ⇒ ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館)

I AM A MAN

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum

1960年代、メンフィスの衛生労働者(ごみ収集作業員)は安い賃金で不衛生で危険な労働をさせられていました。そのほとんどは黒人でした。
1968年2月1日に、エコール・コールとロバート・ウォーカーという労働者がゴミ圧縮機で粉砕され死亡しました。1964年にも同様の事故で2人の労働者が死亡していましたので、労働者たちは市に改善を要求しましたが拒否されました。このままではいけないと感じた1,375人の労働者は2月12日にストライキを敢行しました。
2月21日に約1,000人のストライカーがクレイボーン寺院からダウンタウンまでデモ行進を行いましたが、警察に残虐な妨害にあいました。
2月24日のデモでは”I AM A MAN”と書いたプラカードを首から下げて歩き、このフレーズがスローガンとなりました。
3月18日にマーティン・ルーサー・キング・ジュニアメンフィスのストライキを訪れ、メーソン寺院で数千人の聴衆の前でスピーチを行い士気を高めました。
4月4日にマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが再びメンフィスに訪れた時に暗殺され、ストライキは強まりました。
4月8日のデモ行進には42,000人が参加しました。
4月16日に和解が成立しストライキは終了しました。

ロレインモーテル 306号室

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum
ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museumマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺された時に泊まっていた306号室。その時の部屋の様子を再現してある展示です。飲みかけのコーヒーなどが今でも生々しく感じます。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、牧師としては珍しく喫煙者だったそうです。相当なストレスを抱えて公民権運動を行っていたのでしょう。
また、前日のスピーチの中で「長生きはしたいが、今の自分にはどうでも良い事である」と言ったそうですが、それは霊感のようなものではなく、覚悟しているということだったのでしょう。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが尊敬するインドのマハトマ・ガンジーは1948年1月に暗殺されています。過激派運動家であったマルコムXは1965年2月に暗殺されています。また、暗殺に対してある程度の覚悟をしているような発言は以前からしていたようです。

向い側の建物

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館) National Civil Rights Museum

ジェームズ アール レイがマーティン・ルーサー・キング・ジュニアを狙撃した建物も博物館の一部です。

向い側の建物

バスルームの窓から狙撃したそうで、そのバスルームが再現されています。

向い側の建物

隣の部屋からロレインモーテル306号室のバルコニーが見えます。ジェームズ アール レイは狙撃後にアメリカ国外に逃亡しましたが、数ヵ月後にロンドン ヒースロー空港で逮捕され、テネシー州に護送されて服役中に病死しています。

I AM A MAN の壁画

I AM A MAN の壁画

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館)の近く、メインストリート沿いに、I AM A MAN の壁画があり、見に連れていただきました。 ⇒ I Am A Man Mural の場所

公民権運動とアレサ・フランクリン 【追記】

アレサ フランクリン 「リスペクト」この記事を掲載した直後に、”クイーン・オブ・ソウル”や”レディ・ソウル”と呼ばれている女性ソウルシンガーのアレサ・フランクリンの訃報が世界中を飛び回りました。
アレサ・フランクリンはメンフィス出身で公民権運動の支持者でした。1967年4月に作詞・作曲 オーティス・レディングの「リスペクト」のカバーが全米1位を獲得しました。このアレサによる「リスペクト」のカバーヴァージョンは、公民権運動のアンセムとして取り上げられていました。公民権運動を支持していたアレサ・フランクリンが2009年にバラク オバマの第44代大統領就任式式典でパフォーマンスを披露した事はとても大きな意味を持ちます。
「リスペクト」は、10代の頃からオーティス・レディングのライブ盤で聴いていて好きなナンバーの一つでした。その後に、アレサ・フランクリンのカバーヴァージョンも聴いてその素晴らしさにノックアウトされました。
アレサ・フランクリンが安らかに眠られていることを願っております。

次回 ⇒ 12. ブルースの殿堂博物館(Blues Hall of Fame Museum)へ に続く

ミシシッピ・リバー・カントリーUSA  Memphis Tourism

ナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館)の場所と行き方

National Civil Rights Museum 450 Mulberry St, Memphis, TN

メンフィス国際空港からナショナル・シビルライツ博物館(国立公民権博物館)へ、車(レンタカー)で行く場合の一例。

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  1. メンフィス探訪
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  3. サウス・メイン・ストリート S Main Street
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  6. ギブソンギター メンフィス工場の現状
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  8. マディソン ホテル Madison Hotel
  9. 夜のビールストリート
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 11. ナショナル・シビルライツ博物館を見学
 12. ブルースの殿堂博物館(Blues Hall of Fame Museum)へ
 13. セントラルBBQでランチ
 14. サウス・メインストリート歴史地区 South Main Street Historic District
 15. グレースランド エルビス・プレスリーのテーマパーク
 16. メンフィス ドラムショップ Memphis Drum Shop
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